コラム

2017.6.12  経営者は労働者の「流動化」にどう対応すべきか⑵

弁護団代表 大川原 栄

【経営者に求められる心構え】

既に、労働力不足による新規採用労働者不足が明らかになっておりますが、今後は、この新規労働者採用問題から、上記のとおり、既存雇用労働者による「企業離れ」という事態が顕在化していきます。雇用に関する激動時代への突入です。

これまでの労働者は、買い手市場がもたらした上記の呪縛に拘束されていましたが、今後は、「会社を辞めても再就職はそれほど苦労しない」「今まで以上の条件での再就職をしている方がかなりいる」という情報を入手する中で、長年の呪縛から解放されてそれに応じた考えを持ち、そして行動すると考えられます。これが「売り手市場」(労働力不足)を背景とした労働者の新たな「流動化」であり、これから多くの労働者は、新規就職先の「選択」だけではなく既存就労先の「選択」を行うことになるのです。

その結果、労働者にとって好ましくない企業は労働者によって「選択」「選別」されることになりますので、そのような企業は結果的に「人手不足倒産」等に追い込まれ、市場経済原理に従って淘汰・排斥されていくことになります。

しかし、このような「売り手市場」になっても変化がないものがあります。それは、労働者の本音・本質というものです。労働者は、きちんとした労働条件・労働環境が整い、そこで働く意義を感じるのであれば、自分の力をその企業・仕事で発揮したいと考え、行動します。労働者が「流動化」を加速させるとしても、労基法等の労働法制等を遵守し、労働環境が整っている企業においては「人手不足」で困難に直面するということはなく、労働者の「選択」「選別」の結果、むしろそのような企業に労働者が集まるということになるのです。

経営者は、このような労働者の「企業離れ」という事態を真正面から受け止めた対応が必要になります。会社経営は、市場経済原理を前提とした総合的判断を要するものであり、労働者の要求や要望の全てを受け入れることはできません。しかし、その全てを受け入れないとしても、労働者的視点を踏まえ、労働法制等を遵守する労働環境を整えることは十分に可能です。そして、これこそが労働者の勤労意欲を引き出し、中長期的には会社の合理的経営に合致するという本音の発想と、それによる労務管理体制の確立・実行が必要不可欠だということを改めて自覚すべきです。

【ホワイト企業が選択される時代】

労働者が働く企業を「選択」「選別」する基準は、企業における労働条件(賃金・労働時間・業務内容等)をベースにしつ、同時に労働環境(職場環境)が労働法制等を遵守しているのかどうかがその基本になります。このような企業が「ホワイト企業」と判断され、今後の労働者の企業選択基準になります。

このホワイト企業に対置される「ブラック」的経営を行っている企業、あるいは「ブラック」色を表面上だけ薄めるような経営を継続する企業は、労働者の「選択」「選別」で手痛い目にあうことになります。例え入社時に誤魔化したとしても、入社すればその誤魔化しは直ぐにばれてしまい、誤魔化された労働者は躊躇うことなく次の会社を探すからです。

また、経営者的な視点のみで労務環境を一方的に評価して「当社はホワイト企業です」と自己満足的に言ったところで(経営者同士では「御社はいい会社ですね」とお互いに褒めあうことが可能であったとしても)、労働法制等の遵守を根本に据えない「自称ホワイト」は労働者には通用しないことになります。そのため、「自称ホワイト」企業でも、労働法制等の遵守という実態が伴わない企業の評価は「ブラック」的経営と何ら異なることがないのです。

これからの「売り手市場」において生き残り、発展していく企業は本物の「ホワイト企業」でしかないのですが、どのような基準で「ホワイト企業」と判断されるのか、そして「ホワイト企業」という情報がどのようにシステムで労働者に伝わっていくのかは、現時点で十分に確立していません。そのためのシステム・ツールが、ホワイト企業を適正に評価する「ホワイト認証基準」であり、この「ホワイト認証基準」に基づく「ホワイト企業の証明」が「ホワイト認証」です。 

現在、「一般社団法人ホワイト認証推進機構」及び「ホワイト弁護団」は、この「ホワイト認証」を推進・普及しようとして力を尽くしております。

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